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池田小学校児童殺傷事件と精神障害者の人権を考えるページ

 2001年6月8日(金)悲しんでも悲しみ尽くせない事件が起きました。大阪府池田市の池田小学校において児童ら23人が殺傷され、8名の尊い命が奪われました。亡くなられた皆さんに対し、心より哀悼の意を表明するとともに、残された家族、事件に直面した幼い子供たちの心の傷がたとえ長い時が必要としても、癒されていくことをここに祈念します。
容疑者はその場で逮捕され、現在事件の究明が進められています。その一方で、もう一つの悲劇が始まっています。容疑者が精神科医院に通院していたことが報道されました。それを受けて、感情的な反感のはけ口として精神障害者バッシングが始まっています。そして、小泉首相がいち早く「保安処分」も含めて対策を指示したことです。


 私たちは、精神障害者の人権を擁護し、隔離された場ではなく、地域社会で共に暮らすことを目指してきました。全国には、同じ思いを抱き、実践を続けられている多くの人たちがいます。当事者たちの思い、そして、共に生きることの大切さを感じた人たちの思いは、国家政策としての開放医療、精神障害者のノーマライゼーション推進を実現させるに至りました。しかし、その長年にわたる努力の成果が、今、非常に危機的なポイントをむかえています。
この事件を機に、私たちは、どれほどの意見を交わしあい、数々の戦争、大量虐殺、差別、公害、生活破壊等を経験してきた人間の叡知を結集し、乗り越えていけるのでしょうか。私たち一人ひとりの意見表明と行動が今問われています。

2001年6月13日(水)
[緊急アピール」を発表しました。
 「精神障害者の犯行!」というエスカレーションしたマスコミ報道が展開される中、小泉首相はいち早く「保安処分」への対策を発言をしました。事態の真相がまったく明らかでない段階での小泉首相の発言は、不適切です。「守る会」では、当面のきびしい精神障害者バッシングと「保安処分策動」の急展開へ備えて、「今こそ粘り強く精神障害者を擁護する姿勢を保ち続ける」ことを訴え求めていきました。京都府、京都市の共同作業所、医療機関、関係機関、マスコミなど多くのところへ送りました。(6月13日発の緊急アピールを読む)

2001年6月15日(金)
朝日新聞社より電話取材を受けました。
 「守る会」としての見解をお伝えしました。

2001年6月16日(土)
朝日新聞において「緊急アピール」発表につき、報道されました。

2001年6月18日(月)
「緊急共同抗議声明」を発表しました。(「緊急共同抗議声明」を読む)

2001年6月19日(火)
京都新聞社より取材を受けました。

2001年6月20日(水)
読売新聞社より取材を受けました。

2001年6月22日(金)
公明党府議の発言につき調査と解決をはかりました。
 読売新聞朝刊記事において「公明党の府会議員が『精神障害者が事件起こした』と発言した」と報道されました。この件につき公明党府本部に連絡を入れ、事実確認の要請を行いました。公明党府本部よりは、直接事情説明したいとの申し出を受け、同日夕方、発言した坂根康史府議のほか杉谷孝夫府議と佐藤宏府議の訪問を受けました。
[発言時の状況]
 発言は、6月21日の府議会の文教常任委員会で、池田小事件を受けて府内の学校での安全対策を討議する際に行なった。
[実際の発言]
 [精神障害者が事件を起こした」と発言したのは事実で、本意は、「精神障害者を装った者が事件を起こした」と発言しようと思った。言葉が足りず、うまく伝えられなかった。
[公明党の対応]
 本日の文教常任委員会の冒頭、坂根府議本人より、「不適切な発言で精神障害者に迷惑をかけたと謝罪するとともに発言の取り消しを求め、了承された。議事録から削除された」

 守る会よりは、「このような発言がなされ、報道されたことで、多くの精神障害者・家族がつらい思いをした。議事録が取り消され、記録から抹消されたことが本当の解決ではない。むしろ、削除されず、残されたほうが教訓として本当の反省につながったのではと思う。」と、伝えるとともに党としての見解を文章化し、市民に明らかにすることが一番明確な対応ではないかと提起しました。一方、「こうした議員の認識があると、太田大阪府知事が触法精神障害者の取り締まりを政府に要請したように、荒巻府知事が追随していく下地を作ることになると危惧している。ぜひとも、精神障害者への正しい認識をして、人権を擁護する党として、せき止めて欲しい。」と伝えたところ、「そうします。」と決然とした返答をいただきました。

2001年6月23日(土)
読売新聞朝刊において、「精神障害者の犯罪早急法改正に抗議」と「守る会」の活動が報道されました。
 
問い合わせの電話番号が掲載されたため、フィードバックの電話が鳴り続け、一日応対におわれました。ちょうど、遺族の一人がメッセージを寄せたとのことで、その記事の片隅に掲載されました。遺族の記事は、安全管理を訴えるとともに、犯人への強い憎悪をにじませながら、「慎重論」を唱える代議士や「人権派と呼ばれる人々」に対し「犯罪者の利益だけを過剰擁護し続けるのか」と問いかけるものでした。そのためもあって、感情的に「おまえ!」、「死んでしまえ!」など罵倒するものが多く、理性的な意見が数少なかったことは、今回の紙面構成から当然ありうる市井の人々の現実の反発の姿であったと考えています。
 市内にお住まいの老齢のご夫人は、「事件以降、恐くて、それまで玄関に鍵をしなかったのに、鍵をするようになった。精神異常者(ママ)が入ってくるんではないかとおもて」とおっしゃいました。「取り締まって欲しい」という意見です。現実に、錯乱した精神障害者が乱入してくる確率は天文学的なものと思われます(一方で、こうして、お伝えしている事務局の私の家には、戸締まりに注意していたにも関わらず、窓を破壊して、この10年間に2回も空き巣が入ったという事実がありますが)。ご夫人は、さらに教えてくださいました。「バスに乗っていたら、障害者の子がのってくる。わあわあ言うとる。大変やなあおもて見守ってるんや。」本来なら、理解の方向に向いてくれる方が反発層にまわっている。こうした人々が事件以降急激に増えているのだと実感しました。
 激しい罵声にも、こちらから一方的に電話を切るのではなく、傾聴し、おりを得て、私たちの思いを伝えました。時とともに気持ちがおさまるのか、新聞の小さな記事では伝えきれなかった私たちの思いが伝わったのか、理解を示してくださる方もいました。
 精神障害者本人と家族からの電話もひとつづつありました。息子さんが精神障害者とおっしゃる家族からは、「精神病を患った息子も苦しいだろうが、家族も悩み苦しんだ。先日は、テレビのトーク番組で『精神病は遺伝する』と、学者を名乗る人がコメンテーターとして発言しており、その無責任さに腹が立った。こんな時期だからこそなおさらがんばってください。陰ながら、応援しています。」と静かな口調ながら心のこもった激励をいただきました。また、当事者の方は、「事件以降、事件に対する悲しみと『自分も世間からは同じように見られているのか』と思う不安がつのり、ご飯がのどを通らず、5キロもやせてしまいました。主治医に相談してみます。」と自らの近況を伝えてくださいました。
 

2001年6月25日(月)
京都新聞に刑法学者の藤岡一郎氏、府立洛南病院副院長の岡江晃氏、とともに私たち「守る会」代表多芸の主張が報道されました。
 
捜査が十分進んでない段階からのマスコミ報道が、多くの市民の意識に精神障害者への差別と偏見を助長させている危険性があること。「危険な精神障害者から社会を守る」という「社会防衛論」的な施策の対応は、ハンセン病と同じく、精神障害者を病院や施設に隔離するだけのものでしかないこと。むしろ、医療、福祉、行政が連携をとり、十分な医療と福祉サービスの充実をはかると同時に、偏見をなくし精神障害者を受け止めていく豊かな人間関係のある地域社会を築いていく中でこそ犯罪は減少していくであろうこと。こうした、基本的な私たち「守る会」の思いがおおむね伝えられたと思っています。
 しかしながら、ふれておきたいことがあります。この記事の告知として、第1面に概要が掲載されており、そこには次のように記されています。「3人は、改革に向けた幅広い議論が必要だということで一致。しかし、精神障害者の偏見や差別を助長する短絡的な見方に懸念を示した。」
 一見すると、多少の問題点に配慮するならば、改革への議論を容認するととれる表現です。私たちは、「触法精神障害者対策」と表する予防拘禁的な精神障害者取り締まりへの改革(改悪と読みますが)は、精神障害者全体にとって決定的なマイナスになるものとして、反対の立場をとっています。

2001年7月11日(水)
緊急共同抗議声明を27団体、80人の個人の賛同を得て、小泉首相、坂口厚生労働相、森山法相に送付しました。同時にプレスリリースしました。(賛同団体・個人一覧をみる)
 この間、京都を中心に、他の都道府県も含め約250団体・個人に賛同をお願いしてきました。そのうちいくつかの団体や個人とは、直接事務局からお話をうかがうことができました。それは、いろいろ考えさせられるものでした。
 共同作業所や当事者また家族など個別では、それぞれ個別での当事者への対応をされています。「利用者懇談会で話しあった。利用者から活発な意見があり、しっかり向き合えていることに安心した」・「利用者が判断できる『材料』がないので作業所側としては事態に対して態度保留している」・「作業所を立ち上げたばかりで、課題が山積しており、事態には対応できていない」・「子供が事件以降、テレビを一切見なくなった。見守っている」・「全家連(全国精神障害者家族会連合会)からの指示を待っている。今は動かない」などさまざまな意見を聞かせていただきました。感じるのは、それぞれ事態のなかでさまざまに考えながら、そして悩んでいる姿です。
 一方、政府に対する当事者(家族側)からの圧力団体である全家連の桶谷事務局長は、当団体代表の多芸との電話での情報交換の中で、「小泉首相は、刑法改正など一言も言っていない」とマスコミのねつ造であると結論付けました。信じられない発言です。私たちは、何を信じたらいいのでしょうか?
 これまでの過程で、私たちは「措置制度」に象徴されたお上から賜わる福祉サービスから、市民・当事者を中心に据えた福祉サービスに、同時に、「21世紀はNPO(非営利の団体)の世紀へ」へと移行しようとする過程の中であるからこそ、反論を恐れず、明らかな立場表明と論理主張をできる団体や個人がもっともっと多く出てくることが大切なのだと思いました。だからこそ、私たち京都精神障害者の人権を守る会は、はっきりとした立場表明と批判の論理を提起してきました。それは、本当に大切なことだと思っています。必ずしも、大きい団体が正しいということはない。安易に、個別の姿勢をそこに担保しようとすることは過ちであると考えるべきです。

同日、京都新聞社と読売新聞社から電話での取材を受けました。
 

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