謹啓
はじめに今般の名古屋連続通り魔事件をめぐる放送につきましては、統合失調症の患者の方々やご家族、そして関係者の皆様に大変なご迷惑とご心痛をおかけしたことを心からお詫びいたします。
その責任の重大性については、TBSライブのみならず弊社、東京放送全体として深く認識しておりますことをまず申し述べさせていただき、以下、弊社を代表いたしまして、私どもが取り組むべき社員研修や番組作りについて回答させていただきます。
まず、研修の課題です。
ご指摘のとおり、今回の「ウォッチ!」の放送は「研修の不十分さを露呈した」というような一言で済まされない問題であり、制作現場を監督する役員の立場にある者として重い責任を感じております。
弊社では先の書面でご紹介しましたように、新入社員については、精神障害についての正しい知識を持ち、偏見を払拭するための研修を毎年行っています。また、月1回、社員や制作協力会社のスタッフを対象にした放送人セミナーを開催し、講師をお招きして講演していただくなど、差別問題等についての認識を深めるべく努力して参りました。また、TBSライブでも定期的に年4回、放送上で起きた人権侵害などのトラブル事例を全スタッフがともに勉強する機会を設けさせております。しかし、その甲斐もなく今回の重大な事態を引き起こしてしまったことについては弁解の余地はありません。ただただ差別と偏見を払拭するために効果的な研修を積み重ねる以外にないと痛感しております。
今回の問題が起きて以降、TBSライブでは統合失調症についての理解を深めるべく、長年、精神障害者の方々の取材を積み重ねてきたTBS報道局の斉藤道雄記者を講師に併せて4回の研修会を開催しました。
また、弊社全体の取り組みとして、月1回定期的に開催されている放送倫理委員会、この委員会は弊社の全てのセクションから委員が出席し、放送上起きた当面の倫理問題を集中的に議論し、その教訓をどのように放送に反映していくのかを議論する委員会ですが、その放送倫理委員会で今回の「ウォッチ!」の問題を特別議題として取り上げ討議いたしました。委員会では二度と犯してはならない過ちであるという共通認識のもと、取材から放送に至る番組制作過程の総点検、チェック機能の拡充、研修のあり方など今回はからずも露呈した問題について検証を行いました。
弊社ではさらに社全体としての取り組みを重ねるべく、全社員を対象にした研修計画について教育研修部、審査部、法務部が中心となって協議しております。目下、具体策を取りまとめ中ですが、精神障害者に対する差別や偏見の実態や病気に対する正しい理解、医療や社会体制の不備等について統合的に学び、かつ精神障害者の皆様や関係者の方々と率直に意見交換できるシンポジウム形式の勉強会を早い時期に開催する予定で、準備を進めています。このシンポジウム開催につきましては、貴団体の皆様のお力を是非お借りしたいと思っておりますので、忌憚のないご意見やご助言を賜われば幸いです。また、シンポジウムへのご出席方につきましても宜しくお願い申しあげる次第です。
次に番組の取り組みについてご報告申し上げます。
弊社といたしましては今回の問題を引き起こした「ウォッチ!」の場で精神障害者の方々に対する偏見や誤解を解き、視聴者の皆様にも正しい知識と理解を持っていただけるような放送の取り組みを計画しております。
目下、具体的な内容を検討しておりますが、この夏頃から約1年をかけて継続取材を行い、10分程度の特集企画を4回放送して参る予定です。
統合失調症への正しい知識や理解を深め、精神障害者の方々に対する差別や偏見の実態、それに地域社会との関わりなどを多面的に紹介する企画にしたいと考えております。
貴団体からは、「ウォッチ!」以外の番組での取り組みを、とのご要請がございましたが、過ちを犯した番組制作者みずからが、患者の皆さんが生活されている現場を訪問し、お話を伺い、そのありのままの日常を取材させて頂き、「病気に苦しんでいる一人の人間」のありのままをともに体験することこそが、肝要であると存じます。
また、私どもは4月4日の番組の視聴者の皆さんに対しても、偏見や差別意識を助長してしまった責任があります。朝の番組をご覧頂いている視聴者の皆様は毎朝同じ番組を視聴する傾向が顕著です。このことからも朝の視聴者層の皆様に、番組を通して統合失調症に対する正しい知識や理解を訴えて行く必要があると考えています。
さらに申し上げれば、弊社の「報道特集」「ニュース23」等の番組では、機会あるごとに精神障害をめぐる問題点などについて特集で放送しておりまして、視聴者の皆様には一定の理解をいただいていると考えております。
今回の「ウォッチ!」の放送に対しましては、貴団体をはじめとして各地で精神障害と人権の問題に取り組んでいらっしゃる団体の方々、また個人の患者の方、一般視聴者の方々からも貴重なご意見、ご叱責をいただきました。寄せられたご意見等につきましては謙虚に耳を傾けさせていただいているつもりですが、貴団体のメンバーの方が電話でご意見を寄せられた際に、弊社の者が礼を失するような対応をしたということも聞き及んでおります。まことに失礼をいたしました。
視聴者の皆様から寄せられたご意見等の対応につきましては、もう一度社員、スタッフ全員に対して教育を徹底するよう、私から各関係現場に支持を出しました。
最後に繰り返しになりますが、今般「ウォッチ!」での名古屋連続通り魔事件の犯人像と統合失調症を結び付けてしまった報道は、放送人としてあるまじきことと心から反省しております。この反省の上に立って、これから私どもが取り組むべき課題についてご説明させていただきました。
略儀ながら書面にて失礼いたしました。